トヨタの自分で考える力 新入社員は読んでおきたい読みやすいビジネス本
トヨタ自動車は80年の歴史がある企業。その企業で長く言われ続けていることがいくつかあって、例えば「現地現物」※1 という言葉。その言葉を信念に問題解決や現場改善を進めるのがトヨタなわけですが、トヨタの強みはこうした言葉をもって行動する社員たちの「考える力」にあるとするのが今回レビューする本。
※1 東洋経済新報社 [特集経営者豊田章男] P53
トヨタの自分で考える力 目次
- どうすれば成果はあがるのか? 改善思考
- 時間は動作の影
- 頑張ることは汗をおおくかくことではない
- 人間の脳は困らない限り知恵というのは出てこない
- 自働化
- 同じ石で二度転ぶな
- 代案もないのに反対するな
- 課題のない報告は一切受け付けない
- 視点をずらして1+1=3にする 横展思考
- ベンチマークし続けろ
- 多能化
- 横展
- 多部署を飯のタネと見ろ
- 算術より忍耐
- 二階級上の立場で考えろ
- 問題がわかれば九割解決できる 現場思考
- 自らを必死の現場に置け
- 三現主義
- 現場が先でデータは後だ
- 床にはお金が落ちていると考えろ
- 物に聞け
- 現実から離れないためにも、数字から目を離すな
- 売れに合わせて売れるものだけをつくれ
- 離れ小島をつくるな
- 本質をどう見抜くのか 真因思考
- 言い訳をする頭で実行することを考えろ
- 「不運」で反省を打ち切るな
- 機械は壊れるのではなく、壊すことのほうが多い
- カタログエンジニアはいらない
- 逆らわず、従わず
- 責任を追及するのではなく、原因を追究することに心を砕くべきだ
- 五回のWHY
- 真因
- 大切なのは「目的は何か」である
- スピードが解決を前進させる 行動思考
- 巧遅より拙速
- 人間関係は口より耳でつくれ
- まずは、いい案より多い案
- 問題にぶつかるのは、運がいい証拠だ
- できない100の理由より、できる1つの可能性
- 人間のやったことは、人間がまだやれることの100分の1にすぎない
- 変化こそが安全性を保証する
- 付録「トヨタの口グセ」まとめ
271ページ、割と一般的な経営本というボリュームだけど、ストーリー形式で展開されているので読みやすい。
僕は焦っていた。珍しく朝早くに会社に来て、机に向かっている。サーバーコンピュータの契約書を作成しているのだ。三ヶ月も粘って今月やっと五台の契約が取れた。今日中にその契約書を送らなければいけないのに、昨晩の段階ではまだ何も手をつけていなかった。という感じの書き方なので、本が苦手な人でも割と読める部類だと思う。
2015年7月に発行されていて、アマゾンで先日買ったら2016年5月で5刷りということなので、売れている部類の本と言えそう。アマゾンの評価も概ね好評だった。
著者はトヨタの工場ではなく、神奈川トヨタ自動車のメカニック職で入社された原氏。
どんな仕事でも必ず成果が出せる
この本のタイトルにさらっと書いてある魅惑の言葉。どんな仕事でも必ず成果が出せる。
「どんな期間工でも必ず成果が出せる エンジョイ期間工ブログ」
・・・言ってみただけ。
さて、あなたがもしどこかの会社で正社員になった経験があるなら、上の目次を見たら何かの既視感に包まれると思う。ここで言われているトヨタの口グセの多くは、どこの会社でも似たようなことを言ってたりする。
「答えはお客さんに聞け、現場に聞け」とか「質より圧倒的な量にこだわれ」とか、「失敗は財産と考えろ」とか「失敗から学べ」とか。
トヨタの根底にあるのは「当たり前なことを当たり前にやる」ということなので、少なからず被っちゃうんだと思う。
トヨタの現場の話ではない点だけ注意
この本は、サーバー会社(システム系)の会社で働く入社8年目のダメリーマンと、そこに新たに取締役として就任することとなった元 トヨタ現場統括本部長の金城取締役の話です。
トヨタ自動車の会社内・工場内が舞台ではないのと、本の内容はフィクションだということは読む前に知っておいたほうがいいと思います。
トヨタのDNAを他に活かす方法を教えてくれる
この本は、システム会社で働く大野翔太が、日々の業務で直面するトラブルに苦悩しているところに金城取締役が現れて、「トヨタではこういう考え方がある、だから君もそう考えてみなさい」という論調で進んでいきます。
金城取締役の言葉は、トヨタで働く上でも基本的な考え方になりうるし、他社で働く場合でも役に立つ考え方になるはずです。
例えば先日「結果が出る!トヨタ式&コクヨ式片づけ革命」という日経トレンディ雑誌が発刊されたけど、トヨタの片付け術や4sの考え方は家庭にも他の職場にも活用できるというのは多くの人が理解している事とは思う。
とはいえ、それを応用できるかどうかは読む人の意識の高さによると思うんだけど、それでも「やってみよう」と思う場合は結構バイブルになってくれる事とは思える内容でした。
どちらかといえば新入社員向けの本で、チームリーダー的な役職の人の場合は、部下に対する教育をどうするか、という意味で活用できるかなという内容。
読み終えての感想
これを読んでみて思ったけど、トヨタの考え方を教えてくれる金城取締役の人柄が良すぎという事が第一印象。こんな”成果より手段”を評価してくれる上司が欲しかった、という事でしたね。
冗談はさておいて、トヨタの工場で1年以上働いてるけど、聞いた事ない事のほうが多かった。社員教育だと聞く機会もあるのかもしれないけど、期間従業員だと現地現物と横展くらいかな。
トヨタの営業職だと五回のwhyとかにも出会うんだろうけどね。
それでも日々の業務に活用できそうな考え方もいくつかあった。ただ実践するのは簡単じゃないし、それは本の中でも「理解するというのは行動に移して初めてわかったといえるんだよ」と語られていたくらいだから、日々意識しておく必要はある。
働く上で、自分の職場が全く問題ないという事は稀だと思うし、上司や先輩は問題の解決を多かれ少なかれ命じてくるから、そういう時にこの本の考え方は役立つと思う。ただ、「なるほど!そういう考え方があったのか!」というよりは「まぁ、ですよねぇ〜」という感じが多いんじゃないかなと。
だからアマゾンの評価にもあったけど「忘れてはいけない心がけが満載です」という言葉が一番しっくりきました。
社会経験が浅い人や、正社員経験がない人は読んでおきたい一冊。心構えの本としては分かりやすいし心に入ってきやすい一冊でした。